「山下り」というレジャーがある。
登山は時として過酷なものだが、その過酷さゆえ、景色を見渡す余裕がなく、
下山する時にはへとへと。
山下りでは、とにかく登るだけ登って、山頂からがレジャーのスタート。
遠くの山並みを眺めてみたり、高山植物を愛でてみたり、
ゴールには楽しい下界が待つだけなので、景色が美しく見えるのだそうだ。
表参道ヒルズは、まさに山下り!だと期待して行ったのだが、そんなことはなかった。
1Fから入ると、まずは低い天井が気にかかる。
高さを街並みに揃えたことを差し引いても、だ。
上階の住居部分からは緑豊かな景色が眺められるそうだが、
この景色を共有するような内観を期待していたのが間違いだったか?
エントランス近くのエスカレータから3Fへ。
あとは、スパイラルなフロアをぐるぐると下る。
人間の心理から、逆ルートを選ぶ人は少ないだろう。
(ファッションビルだって、上から見るでしょ?)
ほとんどの人の流れが、やはり上から下へと、ぐるぐる下る。
2つの建築を思い出した。
1つは、昨年12月に見た香港のランガムプレイス。
ショッピングモールは、やはりスパイラル状の動線を持つ。
が、大きな吹き抜けや長いエスカレータ、視界が閉ざされる窮屈なスケールの吹き抜け、など
とてもリズミカルで、「この先はどうなってるんだろう」と期待しながら
ついつい登ってしまう「山登り」だ。
もう1つは、2002年の冬に見たニューヨークのグッゲンハイム美術館(F.L.ライト設計)。
スパイラル状の展示空間を持った現代美術館で、
「山登り」をしながら、吹き抜けの向こう側の半階ずれた展示物や観覧者の姿も楽しく見える。
表参道ヒルズは、どうか。
1つに、「この先はどうなってるんだろう」が全くない。
最初から、ゴールが見えている。
しかも、ゴールにたどり着くまでの経路は、単調な下り坂。
グッゲンハイムのような、吹き抜けの向こう側の景色が美しいわけでもなく、
本当の山下りのような解放感もない。
最新の『GA JAPAN』の「○と×」だったか、
「今回のプロジェクトは安藤さんで良かった」みたいな評が載っていたかと思うが、
その点は同意だ。
こんなにでかくて、トウキョウを象徴する建物を、
我が強い若手建築家に任せるなんて恐ろしい。
表参道側の路面店も、あれだけの長さを、暴力的にならないようにコントロールできているのは、
彼らしさでもあると思っている。
しかし、期待が大きかっただけに、という感想となってしまう。
彼の作品には、山下り型の建築はとても多いし、
原広司の作品にもそういったものは見られるので、
もうちょっと他の作品を見てから、もう一度訪れてみようか。